2006年 12月 26日
【第11回】八木千代子さん講演 |
10回目の建築フォーラムはSTUDIO NASCAの八木千代子さんに講演していただきました。

今回のフォーラムでは八木さんが「どうしたら建築が長生きするか」という視点から、詩とアンパンマンミュージアムから茅野市民館までの作品を説明していただきました。
■アンパンマンミュージアム

高知県香美市に建設されたアンパンマンミュージアムは文字通りやなせたかしさんの作品であるアンパンマンのミュージアムである。展示室にただ作品を展示するのではなく、作品を床の中に埋め込んだり、色や音を利用しながら訪問者をわくわくさせるように計画しています。また1/7スケールのモデルを製作し、そのモデルを通して様々なワークショップをしていきます。このワークショップは自分たちの公共施設であるとの自覚を市民に植え付ける契機となります。
■詩とメルヘン絵本館
アンパンミュージアムに近接した敷地にある詩とメルヘン絵本館はやなせたかしさんの作品が展示されている。作品は定期的に増えていく作品をストックしていけるように計画しています。
■福岡イルセット
テナントビルの設計であり、敷地条件として容積率が400%から500%へと変わろうとしています。この条件に対応できるように建物中央部に大きなヴォイドを計画しています。このヴォイドが容積率の変化に対応します。
またテナントに自由度を与えるため逆梁を採用しています。逆張りは各テナントが自由な配管を取ることが可能となっています。
■近藤内科病院
末期がん患者のための病院です。敷地選定に3年という時間がかかりその時間を利用して病院についての研究をしました。通常病院では水平連続窓を採用していますが、寝たきりの方には一定の景色しか見えないことから、地面から空まで見えるような縦長の窓を採用しました。ナースステーションはいろいろな方向に広がるようなプランニングにし、物理的な距離と共に心理的なケアを可能にしています。
■中里村新庁舎
合併が決定していた中里村に新たな新庁舎を計画するコンペです。庁舎としての役割は短くむしろそのあとの利用方法が問われる中、1階に役場を置くとその後の利用へと切り替わるときに様変わりしてしまうため役場を上階に計画しています。1階には市民が自由に入れる場を計画し、市民とのヒアリングから図書館がほしいとのことから本を置くスペースとして利用されています。
■茅野市民館
茅野駅の目の前にあるこの市民館は市民の為の場所となるように1年目には年間50階もの市民協議の場を設けています。その後も3年間で150回と1年目と同様に市民協議を行っています。市民協議では図書館、ホールなど機能ごとに異なる人との協議が行われ、中高生とのワークショップの場も設けています。図書館は駅から繋がっておりスロープ上に計画しています。また複合館をただ機能ごとに配置するのではなく相互に交流を持ってもらうためホールやホワイエなどを兼用しています。

■両親の自邸
これは八木さん自身も子供の頃過ごした両親の自邸改修の計画です。両親の愛着のある部分を残してほしいという強い願いから部分を残しながら改修していく方法をとっています。
改修後は改修前の印象を残しながら、必要な部分の改修が行き届いています。
■ 略歴
1986 早稲田大学理工学部建築学科卒業
1988 早稲田大学大学院博士前期課程修了(穂積研究室)
1988ー1993 團・青島建築設計事務所勤務
1994 古谷誠章と共同でSTUDIO NASCA設立、以来 有限会社ナスカ一級建築士事務所 代表取締役
1995-2002 文化女子大学非常勤講師
1996- 2000 東京建築士会女性委員会委員
2001- 福島県建築文化賞審査委員
2006-法政大学非常勤講師
1999「詩とメルヘン絵本館」日本建築家協会新人賞受賞
2000 日本建築学会作品選奨受賞「香北町立やなせたかし記念館-アンパンマンミュージアム+詩とメルヘン絵本館」
2004 日本建築学会作品選奨受賞「近藤内科病院」
2007 日本建築学会作品選集受賞「茅野市民館」
by a-forum-hosei
| 2006-12-26 00:39
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