2007年 01月 15日
第12回建築フォーラム |
今回で最後となる講義はゲーリー・カメモトさんにして頂きました。

現在、槇総合計画事務所のシニア・アソシエイトとしてオフィスの中心的役割を担うプロジェクトに関わり、国際的に活躍なさっているゲーリーさんが建築の設計する際テーマとしている次の5つの軸を説明することから講義は始まりました。
1 . Response to Context - Physical & Social
場所の特性や地形を見極め、都市の文脈を読み解くこと
2 . Placemaking - The Creation of Humane Space
人に喜びを与える場、空間をつくること
3 . Construction - Technology & Craftsmanship
長年培ってきた技術や材料によって建築を構成すること
4 . In Search of Universality & Timeless Quality
完成して終わりではなく、長く使われ続けていくこと
5 . Awareness of One’s Culture
自らの文化を知ること
建築設計というのは決して一つのテーマで出来上がるものではなく、幾つもの要素が折り重なっています。そして、建築の舞台は今後はより国際的になっていくことが予想されます。その際、設計者として自らの軸がいかに大切かということを改めて教えて頂きました。
その後は代表的な作品の写真や図面を通してプロジェクトを説明して下さいました。ブログでは主に近年もしくは進行中のプロジェクトを紹介していこうと思います。
■WASHINGTON UNIVERSITY SAM FOX SCHOOL OF DESIGN & VISUAL ARTS. St. Louis, Missouri 1997 - 2006

大学が所有している美術品を展示する美術館です。このプロジェクトにおいて重要な要素の一つとして挙げられるのは、建物だけでなく外部空間も取り込んでデザインしているという点です。キャンパス内の歩行空間である外部の軸と建物の連続によってできる内部の軸を意図的にクロスさせています。また、美術館の動線にも展示室と展示室との間に外部の風景が広がる場所をつくっています。このように外部空間という一種のまち並みを設計に取り入れることで都市としての文脈をつくっていけるというお話をして下さいました。
そしてもう一つ印象に残っているのは建物の外壁に使われている「ライムストーン」という材料です。このライムストーンですが一つ当たりのサイズが200ミリ×1200ミリとかなり小さいのが特徴です。というのもこの材料をつくっていた1920年当初、石を一つ一つ職人が持ち上げて積んでいた為、このような身体的なサイズだったそうです。
■M.I.T. MEDIA ARTS & SCIENCES. Cambridge, Massachusetts 1998 - 2009

このプロジェクトは「ラボ」と呼ぶ要求されたプログラムから設計がスタートしたそうです。スライドではスケッチモデルとしてスタディされた模型も見せて頂きました。

プランはタータングリッド状にサービスとラボという機能がきれいに配置されています。また、このプロジェクトでは隣で何をしているかが分かるようなビジュアルコミュニケーションが大切にされています。それが実際に現れている例としてファサードの「パイプルーバー」が挙げられます。このルーバーによって反対側の活動や風景がピクセルを通して見え隠れするような仕組みになっています。
■AGA KHAN DELEGATION OF THE ISMAILI IMAMAT. Ottawa, Canada 2002 - 2008

現在進行中のプロジェクトで、クライアントの要求としては、「結晶」のような建築をつくって欲しいと言われたそうです。写真を見ると中心のアトリウムを覆う幾何学的なドームがクリスタルのように見えますが実は外壁にも「ネオパリエ」というクリスタルを表現できる素材を使っています。ネオパリエはガラス中に微細な針状結晶を多数析出させたもので、入射する光は微妙な反射の仕方をして、深みのある、ソフトな感触をもたらす素材です。
また、このプロジェクトではイスラム建築に必ず必要な中庭というのを一つの手掛かりとしています。その中庭を覆うドームは「GEOMETRY」、「STRUCTURE」、「FRAME」・・・というような多重構成になっています。
■REPUBLIC POLYTECHNIC NEW CAMPUS AT WOODLANDS. Singapore 2002 - 2006

このプロジェクトはシンガポールの森林地に計画された学校ですが、特徴的なのは授業カリキュラムが現在一般的に行われているものとは一線を画すものがあり、それが設計に大きく関係している点です。一般的な学校の授業では、考える能力、自ら思考する力が身に付かないのではないか?もっと自由に生徒が自分で考えて行動できるような学校に・・・。それ故にこの学校では教室という場所にあまり居ることがなく、朝教室で課題を出されたら教室を後にし、各自が好きな場所で自由にその課題の答えを考える。そして夕方再度教室に集まって発表する。というカリキュラムになっています。
私たち建築の学生もこんな授業(即日課題)があったら楽しそうだと感じました。
■WORLD TRADE CENTER TOWER 4 – 150 GREENWICH STREET. New York, New York 2006 - 2011

記憶に新しいあの同時多発テロによって崩壊したワールドトレードセンター跡地に計画中のプロジェクトです。槇総合計画事務所では五つのタワーのうちの一つ、TOWER 4を設計しています。TOWER 4は南側ウォールストリートからコンプレックスへの重要なアクセスポイントになる場所に位置しています。

設計当初から、建築を意識させるようなものにならないようにと考えられていました。様相は静かでありながら尊厳的です。ファサードは金属でもなくガラスでもないような仕上げに見えるように、周囲の風景を刻々と映し出すようなものになっています。
最後に講義の始めに説明してくださったゲーリーさんの5つの設計テーマとしての軸に6つ目が加えられました。それは「Appropriateness」。ル・コルビジェの「Towards A New Architecture」の一文が紹介されました。
The lesson, is not primarily in the forms created. The lesson lies in the logic which governed the enunciation of the problem and which led to its successful realization. When a problem is properly stated, in our epoch, it inevitably finds its solution. The problem of the (house) _______ has not yet been stated.
空白に何を入れるかはあなた次第です。
最後に私たち建築を志すものに一つの大きな課題とヒントを与えてくれたように思います。貴重なお話どうもありがとうございました。
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GARY KAMEMOTO
1984 Bachelor of Architecture,University of Southern California
1984-present Fumihiko Maki & Maki and Associates
2006 Lectur,Washington University in St' Louis
1999-present Lecture,Hosei University Depertment of Architecture,Tokyo
Report by 103

現在、槇総合計画事務所のシニア・アソシエイトとしてオフィスの中心的役割を担うプロジェクトに関わり、国際的に活躍なさっているゲーリーさんが建築の設計する際テーマとしている次の5つの軸を説明することから講義は始まりました。
1 . Response to Context - Physical & Social
場所の特性や地形を見極め、都市の文脈を読み解くこと
2 . Placemaking - The Creation of Humane Space
人に喜びを与える場、空間をつくること
3 . Construction - Technology & Craftsmanship
長年培ってきた技術や材料によって建築を構成すること
4 . In Search of Universality & Timeless Quality
完成して終わりではなく、長く使われ続けていくこと
5 . Awareness of One’s Culture
自らの文化を知ること
建築設計というのは決して一つのテーマで出来上がるものではなく、幾つもの要素が折り重なっています。そして、建築の舞台は今後はより国際的になっていくことが予想されます。その際、設計者として自らの軸がいかに大切かということを改めて教えて頂きました。
その後は代表的な作品の写真や図面を通してプロジェクトを説明して下さいました。ブログでは主に近年もしくは進行中のプロジェクトを紹介していこうと思います。
■WASHINGTON UNIVERSITY SAM FOX SCHOOL OF DESIGN & VISUAL ARTS. St. Louis, Missouri 1997 - 2006

大学が所有している美術品を展示する美術館です。このプロジェクトにおいて重要な要素の一つとして挙げられるのは、建物だけでなく外部空間も取り込んでデザインしているという点です。キャンパス内の歩行空間である外部の軸と建物の連続によってできる内部の軸を意図的にクロスさせています。また、美術館の動線にも展示室と展示室との間に外部の風景が広がる場所をつくっています。このように外部空間という一種のまち並みを設計に取り入れることで都市としての文脈をつくっていけるというお話をして下さいました。
そしてもう一つ印象に残っているのは建物の外壁に使われている「ライムストーン」という材料です。このライムストーンですが一つ当たりのサイズが200ミリ×1200ミリとかなり小さいのが特徴です。というのもこの材料をつくっていた1920年当初、石を一つ一つ職人が持ち上げて積んでいた為、このような身体的なサイズだったそうです。
■M.I.T. MEDIA ARTS & SCIENCES. Cambridge, Massachusetts 1998 - 2009

このプロジェクトは「ラボ」と呼ぶ要求されたプログラムから設計がスタートしたそうです。スライドではスケッチモデルとしてスタディされた模型も見せて頂きました。

プランはタータングリッド状にサービスとラボという機能がきれいに配置されています。また、このプロジェクトでは隣で何をしているかが分かるようなビジュアルコミュニケーションが大切にされています。それが実際に現れている例としてファサードの「パイプルーバー」が挙げられます。このルーバーによって反対側の活動や風景がピクセルを通して見え隠れするような仕組みになっています。
■AGA KHAN DELEGATION OF THE ISMAILI IMAMAT. Ottawa, Canada 2002 - 2008

現在進行中のプロジェクトで、クライアントの要求としては、「結晶」のような建築をつくって欲しいと言われたそうです。写真を見ると中心のアトリウムを覆う幾何学的なドームがクリスタルのように見えますが実は外壁にも「ネオパリエ」というクリスタルを表現できる素材を使っています。ネオパリエはガラス中に微細な針状結晶を多数析出させたもので、入射する光は微妙な反射の仕方をして、深みのある、ソフトな感触をもたらす素材です。
また、このプロジェクトではイスラム建築に必ず必要な中庭というのを一つの手掛かりとしています。その中庭を覆うドームは「GEOMETRY」、「STRUCTURE」、「FRAME」・・・というような多重構成になっています。
■REPUBLIC POLYTECHNIC NEW CAMPUS AT WOODLANDS. Singapore 2002 - 2006

このプロジェクトはシンガポールの森林地に計画された学校ですが、特徴的なのは授業カリキュラムが現在一般的に行われているものとは一線を画すものがあり、それが設計に大きく関係している点です。一般的な学校の授業では、考える能力、自ら思考する力が身に付かないのではないか?もっと自由に生徒が自分で考えて行動できるような学校に・・・。それ故にこの学校では教室という場所にあまり居ることがなく、朝教室で課題を出されたら教室を後にし、各自が好きな場所で自由にその課題の答えを考える。そして夕方再度教室に集まって発表する。というカリキュラムになっています。
私たち建築の学生もこんな授業(即日課題)があったら楽しそうだと感じました。
■WORLD TRADE CENTER TOWER 4 – 150 GREENWICH STREET. New York, New York 2006 - 2011

記憶に新しいあの同時多発テロによって崩壊したワールドトレードセンター跡地に計画中のプロジェクトです。槇総合計画事務所では五つのタワーのうちの一つ、TOWER 4を設計しています。TOWER 4は南側ウォールストリートからコンプレックスへの重要なアクセスポイントになる場所に位置しています。

設計当初から、建築を意識させるようなものにならないようにと考えられていました。様相は静かでありながら尊厳的です。ファサードは金属でもなくガラスでもないような仕上げに見えるように、周囲の風景を刻々と映し出すようなものになっています。
最後に講義の始めに説明してくださったゲーリーさんの5つの設計テーマとしての軸に6つ目が加えられました。それは「Appropriateness」。ル・コルビジェの「Towards A New Architecture」の一文が紹介されました。
The lesson, is not primarily in the forms created. The lesson lies in the logic which governed the enunciation of the problem and which led to its successful realization. When a problem is properly stated, in our epoch, it inevitably finds its solution. The problem of the (house) _______ has not yet been stated.
空白に何を入れるかはあなた次第です。
最後に私たち建築を志すものに一つの大きな課題とヒントを与えてくれたように思います。貴重なお話どうもありがとうございました。
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GARY KAMEMOTO
1984 Bachelor of Architecture,University of Southern California
1984-present Fumihiko Maki & Maki and Associates
2006 Lectur,Washington University in St' Louis
1999-present Lecture,Hosei University Depertment of Architecture,Tokyo
Report by 103
by a-forum-hosei
| 2007-01-15 02:11
| 2006