2006年 12月 18日
第10回目の建築フォーラム |
第10回目の建築フォーラムは、キドサキナギサさんに講義していただきました。

「建築・インテリア・空間」というテーマで、キドサキさんの作品をいくつか説明していただき、
その作品に対する考え方や、どのように考えて作っていったかを話していただきました。
1:Yビルディング(日暮里)
JR日暮里駅近くにある小規模な複合ビルです。1,2階は貸事務所、3、4階は住宅という構成になっています。周辺は、町工場や木賃アパートがぎっしりと建ち並んでいるため、中庭から採光、通風をとり、住宅のプライバシーを確保し、中庭から都市との関わりを持つように作られています。
2:鈴木木材工業本社(佐世保)
佐世保湾に面した工業団地の突端に位置する、木材会社の本社です。集成材の大スパン架構を用いて、木造の新しいオフィス空間が作られました。吹き抜けの多目的ホールを挟んだ2層のオフィス空間は、内部でルーズにつながり、何通りもの経路を可能になっており、自分なりの通り道、自分なりの居場所を作ることが出来ます。天井に設けられたトップライトは、東西南北の四方に向いてあけられて、それぞれ違った色になっているので、太陽の動きで内部空間に色の変化が現れるようになっています。
3:ガボンの魚市場(西アフリカ)もともとのガボンの市場は漁港脇で、とれたての魚をパラソルの下で台に載せて売っていたので、地元で採れる木材でパラソルが連続するような屋根が作られ、地面が盛り上がって台になったようなコンクリート製の売り場が作られました。雨よけのルーバーが屋根から下がっているけれども、床から2メートルは建具がないため、24時間オープンの市場となっている。
4:青い鳥保育園(佐賀県)
佐賀県に建つ、私立の保育園です。園児は0歳から5歳までの6クラス、約100名で、裸ん坊教育を特色にしています。長ければ6年間、毎日通う子供にとって保育園の空間が、光や季節や成長にともなって変化に富む、発見のある場所であってほしいと考えられました。0,1,2歳児の保育室は中庭に面して配され、園庭側には、3,4,5歳児の保育室を配されました。園児が使う室では唯一、食堂のみが2階に配され、吹抜けの階段を上下することで、水平方向だけでなく垂直方向にもいくつもの空間を体験することが意図されています。また、保育園というプログラムに対して、どこからでも入ってどこからも出られる、ゆきどまりのない流動的な空間となっています。
5:ピーナッツハウス
枚方市郊外に計画された住宅です。表面を覆う四辺形のパネルそのものが構造化され、リブのない内部空間となりました。ここでは構造がフレームの痕跡を残さず、ヴォリュームの表面となり、ピーナツ型の空気だけがそこに存在しています。生活空間は、全て2階のピーナツの中にもってこられています。ピーナツを支える1階はRCの薄肉壁式ラーメン構造ので、玄関と一体となったギャラリーのようなオープンスペースとなっており、近隣づきあいを含めた外の生活の場として、2階の生活を補完している。
6:チュウクウ
この住宅では、住宅をとりまく空と、それが住宅の内部を満たすときに微妙に変化する空気のふたつの空(気)の顕在化出来るように計画されました。法規限度いっぱいのヴォリュームの中に、これから生活が変化したときに徐々に部屋に分かれていけばよいという要望であったので、生活の場となる2、3階は、ワンルームの空間構成となっており、住宅はどのスペースも基本的に区切られていません。2階で機能があるのは、長さ15mのキッチンカウンターだけであり、3階では、長さ10mの洗面・ユーティリティカウンターだけとなっています。駐車スペースのある1階は、RC構造となっているが、ワンルームの2、3階は、木造となっており、外部との空間の境界はすべてガラスのカーテンウォールとなっています。
7:クタイ
変形敷地にほぼ沿った平面形をもつコンクリートの床と壁を組み上げた住宅です。内部は、地下にひとつ、空中にふたつのスペースが積層され、地上階からそれぞれ直通の階段があります。階段とテラスは躯体から片持ちで構成されています。
8:ヨウキ
以前生活をしていた住宅のプランが、家族の要望によって引き継がれて設計された2世帯住宅です。建物の内側に耐震壁を配し、外壁は2.3mm厚のスチールパンチング、2.3mm厚のスチールエキスパンド、1.6mm厚のスチール、ガラスの4種類によって構成されています。
9:2コ1プロジェクト
SE構法の展示会(SELL HOUSE)のために計画された、2世帯住宅のプロジェクトです。親世帯、子供世帯が平面的にも、立体的にも凸凹と組み合わさって、直方体の空間の中に配された構成となっています。上下、左右のつながりがあり、音、温度、光でそれぞれお互いの気配を感じることが出来るように構成されています。
また、ヒルサイドギャラリーで行われた、「SELL HOUSE」の展示会の会場構成もされました。
10:Kアパートメント改装
キドサキさんの自邸の改装計画です。何でも出来るワンルームとして考えられ、キッチンの隣にはベッドがあるといった空間構成になっています。また、この室のトイレとお風呂は、洗面台のみで仕切られているので、上部はつながった構成となっています。
11:ナナ・マル・イチ
10のKアパートの隣の部屋の改装計画です。仕上げ材をはがした内装となっています。壁はなく、部屋を仕切るものは3ミリの鉄板の格子状の棚だけなので、棚の荷物によって室の印象が変化すると思いました。また、風呂、トイレを仕切る壁さえないそうです。
12:2二世帯バー slow
11同様、仕上げ材をはがした、内装となっています。仕上げ材をどこまではがし、どこで止めるかというのは、ある程度予測をして行っていくようですが、予測を裏切ることもあるようです。
13:天天
布で小さな空間を構成したプロジェクトです。布というやわらかいものでも空間は作れるということです。
14:キ・モノ
バンクアートで開催された展示会の作品です。こちらも布で空間を作っています。
15:あかり屋
光が直進するという性質を持ったアクリルを使った、インスタレーションです。
16:多多
アクリル板を7層重ねて作った、ベンチです。当初は厚さのあるアクリル板1枚で作る予定だったそうですが、最終的には薄いアクリル板を隙間をあけて重ねるという案になったそうです。
17:2コまる
15同様、アクリル板を積層させて作った家具です。こちらはイスやサイドテーブルに使われます。
18:耳ノタカサ目ノタカサ
「ホームシアターのある家」の展示会のための9坪ハウスです。
壁はナナメになっており、この壁が音の反射面になったり、映像の投影面になったりしています。そして座ったときの耳と目の高さに、音と映像が集まる仕掛けがされています。しかし日常生活で、何時間も「ホームシアター」に座っていられることは少ないということで、家事や出かける支度をしながら、また寝ながらでも映像が楽しめる工夫がされています。
19:映像の家
床の素材が入れ変わることで空間を仕切るという構成の住宅プロジェクトです。プールの中にも映像が映し出されるようです。
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キドサキナギサ
1960 東京生まれ
1982 芝浦工業大学工学部建築学科卒業
1984 芝浦工業大学大学院建設工学専攻修士課程終了
1984-85 磯崎新アトリエ
1985-93 伊東豊雄建築設計事務所
1993 城戸崎和佐建築設計事務所
受賞
SD賞
グッドデザイン賞
インテリアプランニング賞'98優秀賞
東京建築士会住宅建築賞
INAX住空間コンテスト銅賞
----------------------------------------------------------------------------------------------以下、学生のレポートです。
04D7102 藤本 景子
今日のテーマは『建築・インテリア・空間』で、今私が最も気になっていることを先生はお話してくださった。デザインというものを考えたとき、どうしても“表面”をデザインするだけで、中身のあるデザインを考えることはなかなか難しいと感じる。外部空間も大事であるが、内部空間の大切さも忘れてはいけない。どのように光を取り入れるか、どのように収納していくか、どのようにバランスのいい空間をつくっていくか等、美しく並べていく空間というものを考えていかなくてはならない。スケール感もあるが、居心地の良い空間をつくることは感覚的なものだけではないと思う。
先生の考え方には『隙間を埋めていく』というものがある。ただ並べるだけでなく、内容の分類と、並びの美しさを大事になさっている。これとても大切なことだけれど、『美しく隙間を埋める』ことは案外忘れがちではないかと思う。少なくとも私はそうである。うまく整理整頓ができなかったりする。置いても雑なのだ。そのときやはり大切なのはその場に対する気持ちではないかと考える。嫌々やっていてはもちろん駄目である。どれだけその空間に気持ちがこめられるか、どのようにしたくて空間をデザインするか、が決めてとなる。先生の作品からは、人のことを考えた何か“やさしさ”がこめられているように感じた。
ここで、自分がやりたいデザインを考える。今私が興味を持っているのは、古い建築を再生することである。日本では歴史的な建築物があるのにもかかわらず、汚くなったら真新しいものに変えては次々に壊されていく。また時代が経ったものに関しての感じ方が身近でなく、どこかまるで他国の人の目線になってしまっているのではないかと思う。
オランダはモダンデザインが発展している。建築だけでなく、標識や看板などがきっちりデザインされていることに驚く。建築に関しては、例えば運河沿いの住宅がうまくリノベーションされている。18世紀の外観はそのままで、内部は現代的な改修がされているそうだ。オランダの工科大学の建築学科には1万人近くの学生がいて、“リノベーション専門のコース”があると聞いた。日本にはないことが海外では実現されているのだ。歴史的建築物は何を表に出して、何を隠すかが難しい。けれどそういった考え方を蓄積することで、歴史的建築物を現代風にアレンジできる可能性が増えるのではないかと思う。歴史的な建築物が壊されている中、日本に必要な考え方はそういった“中身のあるデザイン”であると思う。
どんなことに関しても、美しいデザインを考えていくことはこれからの課題である。ただし、デザインするにあたって、何を大切にしていくかで考え方は決まるのではないかと思う。私も人々に気持ちが伝わるデザインをしていきたいと強く思った。
04D7114 水谷 高規
建築家が何かをつくる時、そこには必ず理由が存在する。地形、環境、歴史的背景などから問題点や特徴をみつけだし、それをいかに改善する、あるいは生かすなどといった理由で計画は進められていく。学校の課題に関しても同じである。コンセプトなしの作品が評価を受けることは、まずない。それは、課題の意図に対する答えの安易さ、メッセージ性の薄さがでているからであろう。何を考えて、その形、そのプランになったのかという理由がなくてはならない。決して「好き」を理由にすることなどできない。と、私は思っていた。
しかし、キドサキさんは迷うことなく「好き」という言葉を使った。不思議と違和感なく聞こえた。そして私はそこに何か深いものを感じて、納得してしまった。
フランンク・O・ゲーリーの曲線、ザハ・ハディッドの斜線。彼らの建築には常にそれが用いられている。確かに美しいフォルムであるし、計算され、周囲にも溶けこんでいるように思う。しかし、それが曲線である理由、斜線である理由は本当にあるのだろうか。私はないように思う。空間体験としておもしろいというのは一つの理由となるのかもしれないが、ではなぜそれをおもしろいと感じるのか。きっとそこに理由はない。少なくとも、言葉では説明できないであろう。キドサキさんの「奇数が好き。」も同じである。キドサキさんにとって、「奇数が好き」というのは理由となるが、なぜ奇数が好きなのかというのには理由はない。おそらく、それが私を納得させたのだ。なぜなら、それは『美観』の問題だからである。彼らにとって、曲がっているもの、斜めになっているものこそ美しいのだ。キドサキさんにとって、5や6ではなく、7こそ魅力的な数字なのだ。ただそれだけである。
建築は言葉でつくるものではない。その建築の魅力を言葉によって伝えるというのは、建築家にとって欠かすことのできない能力ではあるが、言葉では伝わりきらない魅力を持つのが建築だと、私は思う。空間とは、感じるもの。そういった感覚的なものに対して、感覚的に考えること、つまりはイメージすることというのは大切なのではないだろうか。そういった点で、キドサキさんの「奇数が好き」という本人さえもわからぬその不可解なイメージは、一つの魅力となって、カタチに現れているのではないだろうか。

「建築・インテリア・空間」というテーマで、キドサキさんの作品をいくつか説明していただき、
その作品に対する考え方や、どのように考えて作っていったかを話していただきました。
1:Yビルディング(日暮里)
JR日暮里駅近くにある小規模な複合ビルです。1,2階は貸事務所、3、4階は住宅という構成になっています。周辺は、町工場や木賃アパートがぎっしりと建ち並んでいるため、中庭から採光、通風をとり、住宅のプライバシーを確保し、中庭から都市との関わりを持つように作られています。
2:鈴木木材工業本社(佐世保)
佐世保湾に面した工業団地の突端に位置する、木材会社の本社です。集成材の大スパン架構を用いて、木造の新しいオフィス空間が作られました。吹き抜けの多目的ホールを挟んだ2層のオフィス空間は、内部でルーズにつながり、何通りもの経路を可能になっており、自分なりの通り道、自分なりの居場所を作ることが出来ます。天井に設けられたトップライトは、東西南北の四方に向いてあけられて、それぞれ違った色になっているので、太陽の動きで内部空間に色の変化が現れるようになっています。
3:ガボンの魚市場(西アフリカ)もともとのガボンの市場は漁港脇で、とれたての魚をパラソルの下で台に載せて売っていたので、地元で採れる木材でパラソルが連続するような屋根が作られ、地面が盛り上がって台になったようなコンクリート製の売り場が作られました。雨よけのルーバーが屋根から下がっているけれども、床から2メートルは建具がないため、24時間オープンの市場となっている。
4:青い鳥保育園(佐賀県)
佐賀県に建つ、私立の保育園です。園児は0歳から5歳までの6クラス、約100名で、裸ん坊教育を特色にしています。長ければ6年間、毎日通う子供にとって保育園の空間が、光や季節や成長にともなって変化に富む、発見のある場所であってほしいと考えられました。0,1,2歳児の保育室は中庭に面して配され、園庭側には、3,4,5歳児の保育室を配されました。園児が使う室では唯一、食堂のみが2階に配され、吹抜けの階段を上下することで、水平方向だけでなく垂直方向にもいくつもの空間を体験することが意図されています。また、保育園というプログラムに対して、どこからでも入ってどこからも出られる、ゆきどまりのない流動的な空間となっています。
5:ピーナッツハウス
枚方市郊外に計画された住宅です。表面を覆う四辺形のパネルそのものが構造化され、リブのない内部空間となりました。ここでは構造がフレームの痕跡を残さず、ヴォリュームの表面となり、ピーナツ型の空気だけがそこに存在しています。生活空間は、全て2階のピーナツの中にもってこられています。ピーナツを支える1階はRCの薄肉壁式ラーメン構造ので、玄関と一体となったギャラリーのようなオープンスペースとなっており、近隣づきあいを含めた外の生活の場として、2階の生活を補完している。
6:チュウクウ
この住宅では、住宅をとりまく空と、それが住宅の内部を満たすときに微妙に変化する空気のふたつの空(気)の顕在化出来るように計画されました。法規限度いっぱいのヴォリュームの中に、これから生活が変化したときに徐々に部屋に分かれていけばよいという要望であったので、生活の場となる2、3階は、ワンルームの空間構成となっており、住宅はどのスペースも基本的に区切られていません。2階で機能があるのは、長さ15mのキッチンカウンターだけであり、3階では、長さ10mの洗面・ユーティリティカウンターだけとなっています。駐車スペースのある1階は、RC構造となっているが、ワンルームの2、3階は、木造となっており、外部との空間の境界はすべてガラスのカーテンウォールとなっています。
7:クタイ
変形敷地にほぼ沿った平面形をもつコンクリートの床と壁を組み上げた住宅です。内部は、地下にひとつ、空中にふたつのスペースが積層され、地上階からそれぞれ直通の階段があります。階段とテラスは躯体から片持ちで構成されています。
8:ヨウキ
以前生活をしていた住宅のプランが、家族の要望によって引き継がれて設計された2世帯住宅です。建物の内側に耐震壁を配し、外壁は2.3mm厚のスチールパンチング、2.3mm厚のスチールエキスパンド、1.6mm厚のスチール、ガラスの4種類によって構成されています。
9:2コ1プロジェクト
SE構法の展示会(SELL HOUSE)のために計画された、2世帯住宅のプロジェクトです。親世帯、子供世帯が平面的にも、立体的にも凸凹と組み合わさって、直方体の空間の中に配された構成となっています。上下、左右のつながりがあり、音、温度、光でそれぞれお互いの気配を感じることが出来るように構成されています。
また、ヒルサイドギャラリーで行われた、「SELL HOUSE」の展示会の会場構成もされました。
10:Kアパートメント改装
キドサキさんの自邸の改装計画です。何でも出来るワンルームとして考えられ、キッチンの隣にはベッドがあるといった空間構成になっています。また、この室のトイレとお風呂は、洗面台のみで仕切られているので、上部はつながった構成となっています。
11:ナナ・マル・イチ
10のKアパートの隣の部屋の改装計画です。仕上げ材をはがした内装となっています。壁はなく、部屋を仕切るものは3ミリの鉄板の格子状の棚だけなので、棚の荷物によって室の印象が変化すると思いました。また、風呂、トイレを仕切る壁さえないそうです。
12:2二世帯バー slow
11同様、仕上げ材をはがした、内装となっています。仕上げ材をどこまではがし、どこで止めるかというのは、ある程度予測をして行っていくようですが、予測を裏切ることもあるようです。
13:天天
布で小さな空間を構成したプロジェクトです。布というやわらかいものでも空間は作れるということです。
14:キ・モノ
バンクアートで開催された展示会の作品です。こちらも布で空間を作っています。
15:あかり屋
光が直進するという性質を持ったアクリルを使った、インスタレーションです。
16:多多
アクリル板を7層重ねて作った、ベンチです。当初は厚さのあるアクリル板1枚で作る予定だったそうですが、最終的には薄いアクリル板を隙間をあけて重ねるという案になったそうです。
17:2コまる
15同様、アクリル板を積層させて作った家具です。こちらはイスやサイドテーブルに使われます。
18:耳ノタカサ目ノタカサ
「ホームシアターのある家」の展示会のための9坪ハウスです。
壁はナナメになっており、この壁が音の反射面になったり、映像の投影面になったりしています。そして座ったときの耳と目の高さに、音と映像が集まる仕掛けがされています。しかし日常生活で、何時間も「ホームシアター」に座っていられることは少ないということで、家事や出かける支度をしながら、また寝ながらでも映像が楽しめる工夫がされています。
19:映像の家
床の素材が入れ変わることで空間を仕切るという構成の住宅プロジェクトです。プールの中にも映像が映し出されるようです。
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1960 東京生まれ
1982 芝浦工業大学工学部建築学科卒業
1984 芝浦工業大学大学院建設工学専攻修士課程終了
1984-85 磯崎新アトリエ
1985-93 伊東豊雄建築設計事務所
1993 城戸崎和佐建築設計事務所
受賞
SD賞
グッドデザイン賞
インテリアプランニング賞'98優秀賞
東京建築士会住宅建築賞
INAX住空間コンテスト銅賞
----------------------------------------------------------------------------------------------以下、学生のレポートです。
04D7102 藤本 景子
今日のテーマは『建築・インテリア・空間』で、今私が最も気になっていることを先生はお話してくださった。デザインというものを考えたとき、どうしても“表面”をデザインするだけで、中身のあるデザインを考えることはなかなか難しいと感じる。外部空間も大事であるが、内部空間の大切さも忘れてはいけない。どのように光を取り入れるか、どのように収納していくか、どのようにバランスのいい空間をつくっていくか等、美しく並べていく空間というものを考えていかなくてはならない。スケール感もあるが、居心地の良い空間をつくることは感覚的なものだけではないと思う。
先生の考え方には『隙間を埋めていく』というものがある。ただ並べるだけでなく、内容の分類と、並びの美しさを大事になさっている。これとても大切なことだけれど、『美しく隙間を埋める』ことは案外忘れがちではないかと思う。少なくとも私はそうである。うまく整理整頓ができなかったりする。置いても雑なのだ。そのときやはり大切なのはその場に対する気持ちではないかと考える。嫌々やっていてはもちろん駄目である。どれだけその空間に気持ちがこめられるか、どのようにしたくて空間をデザインするか、が決めてとなる。先生の作品からは、人のことを考えた何か“やさしさ”がこめられているように感じた。
ここで、自分がやりたいデザインを考える。今私が興味を持っているのは、古い建築を再生することである。日本では歴史的な建築物があるのにもかかわらず、汚くなったら真新しいものに変えては次々に壊されていく。また時代が経ったものに関しての感じ方が身近でなく、どこかまるで他国の人の目線になってしまっているのではないかと思う。
オランダはモダンデザインが発展している。建築だけでなく、標識や看板などがきっちりデザインされていることに驚く。建築に関しては、例えば運河沿いの住宅がうまくリノベーションされている。18世紀の外観はそのままで、内部は現代的な改修がされているそうだ。オランダの工科大学の建築学科には1万人近くの学生がいて、“リノベーション専門のコース”があると聞いた。日本にはないことが海外では実現されているのだ。歴史的建築物は何を表に出して、何を隠すかが難しい。けれどそういった考え方を蓄積することで、歴史的建築物を現代風にアレンジできる可能性が増えるのではないかと思う。歴史的な建築物が壊されている中、日本に必要な考え方はそういった“中身のあるデザイン”であると思う。
どんなことに関しても、美しいデザインを考えていくことはこれからの課題である。ただし、デザインするにあたって、何を大切にしていくかで考え方は決まるのではないかと思う。私も人々に気持ちが伝わるデザインをしていきたいと強く思った。
04D7114 水谷 高規
建築家が何かをつくる時、そこには必ず理由が存在する。地形、環境、歴史的背景などから問題点や特徴をみつけだし、それをいかに改善する、あるいは生かすなどといった理由で計画は進められていく。学校の課題に関しても同じである。コンセプトなしの作品が評価を受けることは、まずない。それは、課題の意図に対する答えの安易さ、メッセージ性の薄さがでているからであろう。何を考えて、その形、そのプランになったのかという理由がなくてはならない。決して「好き」を理由にすることなどできない。と、私は思っていた。
しかし、キドサキさんは迷うことなく「好き」という言葉を使った。不思議と違和感なく聞こえた。そして私はそこに何か深いものを感じて、納得してしまった。
フランンク・O・ゲーリーの曲線、ザハ・ハディッドの斜線。彼らの建築には常にそれが用いられている。確かに美しいフォルムであるし、計算され、周囲にも溶けこんでいるように思う。しかし、それが曲線である理由、斜線である理由は本当にあるのだろうか。私はないように思う。空間体験としておもしろいというのは一つの理由となるのかもしれないが、ではなぜそれをおもしろいと感じるのか。きっとそこに理由はない。少なくとも、言葉では説明できないであろう。キドサキさんの「奇数が好き。」も同じである。キドサキさんにとって、「奇数が好き」というのは理由となるが、なぜ奇数が好きなのかというのには理由はない。おそらく、それが私を納得させたのだ。なぜなら、それは『美観』の問題だからである。彼らにとって、曲がっているもの、斜めになっているものこそ美しいのだ。キドサキさんにとって、5や6ではなく、7こそ魅力的な数字なのだ。ただそれだけである。
建築は言葉でつくるものではない。その建築の魅力を言葉によって伝えるというのは、建築家にとって欠かすことのできない能力ではあるが、言葉では伝わりきらない魅力を持つのが建築だと、私は思う。空間とは、感じるもの。そういった感覚的なものに対して、感覚的に考えること、つまりはイメージすることというのは大切なのではないだろうか。そういった点で、キドサキさんの「奇数が好き」という本人さえもわからぬその不可解なイメージは、一つの魅力となって、カタチに現れているのではないだろうか。
by a-forum-hosei
| 2006-12-18 03:24
| 2006