2006年 12月 12日
第8回講義 安田雅子さん・寺本晰子さん |
今回のフォーラムはいつもとは少し形式が変わり、安田雅子さんと寺本晰子さんのお二人での講義となりました。
テーマは「世界に通用する建築家とは ~ 建築家を目指す学生のためのキャリア形成ガイダンス」
第1回目の今回は、JIAが行っている国際交流活動や建築士の資格に関する内容でお話いただきました。
日本建築家協会(JIA)は建築設計及び工事管理の業務を行う設計者(専業建築家)による職能団体であり『建築文化の向上・建築家の資質の向上・建築設計業務の質の向上・公共の福祉への寄与』を目的としているそうです。
今回はJIAの活動の中でも国際交流活動に関してお話いただきました。
国際交流は盛んに行われているそうで、中でもARCASIA(アルカシア/アジア建築家協議会)では学生に国際的に活動する機会も与えているそうです。(※ARCASIAには1991年に日本も正式メンバーになったそうです。)
これには各国の学生が参加したそうですが、日本からはJIA卒計展で金・銀受賞者を派遣しているそうです。3年生の皆さんにはまだまだチャンスがありますね。
また、建築士の資格に関するお話もしていただきました。
日本における建築家資格は国際建築家連合(UIA)の掲げる資格とは若干異なるようです。
日本における建築士資格は建築専門教育として大学を卒業後、実務経験を2年経ることで試験を受けることが出来ますが、UIAでは認定された大学で5年以上学んだ後、実務訓練を2年以上行い、能力の証明を経て資格が認定されるそうです。
(またJIA登録建築家とは、実務訓練3年+1級建築士+面接を経て登録できるそうです。)
実務経験と実務訓練では大きな違いがあり、今後日本でも実務経験に関しては内容限定への改正が見込まれています。
日本では1級建築士免許取得率が非常に高いそうですが、最近の様々な社会的問題から今後見直されるようです。
後半は少々難しいお話ではありましたが、今後建築を続けてく私達にとってはとても重要なお話でした。
(次回に続く)
安田雅子 (写真右)
1955年4月7日生まれ
1974年4月お茶の水女子大学文教育学部哲学科入学
1978年3月お茶の水女子大学文教育学部哲学科卒業
1978年4月~1979年3月(株)ニッカウヰスキー勤務
1980年5月~1988年12月(社)国際交流サービス協会勤務
1989年1月~(社)日本建築家協会勤務(国際関係、広報担当)
寺本晰子 (写真左)
法政大学工学部建設工学科建築専攻
1968年 法政大学工学部助手
1969年 ㈱建築計画研究所/㈱益田建築設計事務所
1988年 ㈱マアーキテクチャーオフィス
2002年 工学院大学専門学校 2部建築学科
2003年 昭和女子大学生活文化、福祉環境学科、大学院
2004年 東京地方裁判所民事調停員
レポート 渡邉研究室 M1 M・E
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以下、レポートです。
人の役に立つために
04d7031 川田 佳苗
今回は国際的な建築なるために技術や考え方と言うより世界との資格、基準の違いをお話しいただいた。一級建築士やその他の資格は国内しか通用しないと言うのはなんとなくわかっていた。また日本以外の建築家は設計から構造までのほとんどの部分を設計するので地位が高い、と言う話も耳にしたことがあった。今回はそう言った今までなんとなく聞いたことがあった部分を明確にしてくれる、とても興味深い講演会であった。
わたしは今回の講演の中で安田さんが最後におっしゃった「院を出たら一級の受験資格は取れるけど個人的には実務経験を積んでからのほうがよい」と言う言葉が特に印象に残った。わたし自身も以前同じような言葉を言われたことがあるからである。
わたしの場合は将来海外ボランティアをしたくて、しかもなるべく若いうちに参加したいと考えていた。そこである団体の相談員に相談したところその言葉を言われた。「大学を卒業してすぐ行けるものもあるけれど、実務経験を積んでからの方が相手のためになる」と。安田さんの言葉と同じである。建築の資格を取ることもボランティアをすることも、むしろそのふたつに限ったことではないが、信頼を得て人のためになることをする。人の役に立つためには勉強して知識を増やすことよりも実際に経験することが大切だと言うことを改めて感じた。だからいまはあまり勉強しなくていいと言う問題ではないのはわかる。しかし社会に出たら今までのように勉強したら成績が上がる、と言う単純なしくみではないと思う。
また今回の講演会のテーマは「世界に通用する建築家とは」でUIAアコードやJIAの登録建築家についての資格のお話しもしていただいた。その中で日本の建築士は大学4年の後に実務経験2年であるのに対し、UIAアコードは大学5年以上、実務訓練2年以上が必要であった。日本の建築士は世界の建築士に比べ大学年数も少ないだけでなく実務経験も短い。これでは海外の建築家に引けを取ってしまう。
海外ボランティアの建築部門の要請も大卒で行けるものもあるが大半は実務経験が3年ないし5年以上である。わたしは正直いままで少し疑問であった。一級建築士を取ればいいのではないか、と考えている部分があった。しかし今回話を聞いて、国際基準に少しでも合わせるためにそうしているのではないかと思った。
わたしは安田さんの話を聞いて、早くボランティアに参加したいという気持ちを抑えて本当に現地の人の役に立てるレベルまで自分で勉強と経験が必要だと思った。
03d7055 笹川 和晃
テーマ
「世界に通用する建築家になるために建築家をめざす学生のためのキャリア形成ガイダンス」
今回の講演はJIAの安田雅子さんであった。
JIAやUIAの存在ははっきり言って、知らないということのほうが多く、今回の講演はこれからのキャリアで通らなくてはならない大変勉強になるものであった。
講演のほとんどは建築家の人の哲学や思考、建築形態の完成過程などのお話で人として人生として参考になり勉強になるものであったが、また別の意味で今回の講演は勉強になった。
建築の設計監理を行う建築家の団体として、1987年に結成された。日本建築家協会の会員は、建築がクライアントの大切な資産であると同時に、公共にとっても重要な社会的資産であると考えられ、そして建築の設計監理を行う者すなわち建築家は、一定の知識・技術を持つ者として国から与えられる建築士の資格だけでなく、その責任を負うにふさわしい高度の業務遂行能力と倫理意識を持つ必要があると考えられている。
日本建築家協会は、そのような建築家の資質の向上および業務の進歩改善を図ることを通じて、建築物の質の向上と建築文化の創造・発展に貢献することを目的として結成された団体であり、この目的のために建築家職能原則、倫理規定・行動規範および懲戒規定を会員の総意に基づいて定め、自主自律の団体運営を行っているそうである。
欧米では古くから各国で建築家団体を結成し、 自主運営によって建築家がその職業的責任を果たしていく上で必要な活動を行ってきた。日本建築家協会は、諸外国の団体と同じ性格を持つわが国唯一の建築家の団体として、ユネスコの外郭団体である国際建築家連合(UIA)の日本支部となっているとのことである。
その中で建築家とは、建築関係のプロフェッショナルサービスを提供する職業とされている。プロフェッショナルサービスとは高度に専門的で、公共性の高いサービスのことを言い、たとえば医師、弁護士、建築家、会計士等の提供するサービスがそれにあたる。
その中で、姉歯事件について語られていた。あの事件によって建築界の品位や信用は落ち、それを回復するため、社会的信用を回復するためにJIAは機能している。それに関して教育という面から建築家の資格の見直しも進んでいるという。資格試験に関しては試験ではなく訓練ということを多くおっしゃっていた。確かに現在の建築家の中で、訓練され常に能力を向上させることを怠っている人間もいるはずである。それはJIAの指摘するとおり、現在の資格制度に問題があると思われる。
しかし、それは極論を話せば、制限を加えることで強制させるという面も持っていることを忘れてはいけないと思う。反対しているわけではなく、それは「建築家として」という建築家本来の目的意識を失った人たちのためにはうまく機能するが、まじめにといってはおかしいがプロフェッショナルとしての意識を持ち社会的貢献をすると考えている建築家にとっては面倒極まりない話なのではなかろうか。
と反論めいたことを言ったが、「建築家として」という意識を持っているのならば常に自身の向上に努め、社会的貢献をしている(することができる)ということを社会に提示する義務を負うことは何も言わずに認識されていいことである。
ただ、現在の建築家はその前提である、プロとしての意識の希薄さやそれ以前に人としてという意識に欠けてきてしまっているという時代背景があるように感じてならないのだ。
そもそも人として生きるという意識を忘れかけている現代の人々は(自分も含む)こういった「当たり前」という前提条件をモノがあふれる時代に生まれたからこそもっと考えこのことを強く意識して生きていく必要がある。
そういった意味で、制度や資格や訓練といったものは必要性をこれからも増していくであろう。逆にそういった意識が現代によみがえってくるのならば、そういったものは自然消滅的になくなっていきさらに上の次元での能力の開発や進展を促していくことに移行していくはずである。いつの時代もそういったことを繰り返していくことで右肩上がりの形をとりながら3歩進んで2歩さがるということをしている。しかし、この時代にはそのバイオリズムが崩れる可能性があることを忘れてはならない。それは「現代の「人として」という意識の希薄さはいつの時代も一緒だからね」と楽観視できるほどのものではなくなっているのだから。
テーマは「世界に通用する建築家とは ~ 建築家を目指す学生のためのキャリア形成ガイダンス」
第1回目の今回は、JIAが行っている国際交流活動や建築士の資格に関する内容でお話いただきました。
日本建築家協会(JIA)は建築設計及び工事管理の業務を行う設計者(専業建築家)による職能団体であり『建築文化の向上・建築家の資質の向上・建築設計業務の質の向上・公共の福祉への寄与』を目的としているそうです。
今回はJIAの活動の中でも国際交流活動に関してお話いただきました。
国際交流は盛んに行われているそうで、中でもARCASIA(アルカシア/アジア建築家協議会)では学生に国際的に活動する機会も与えているそうです。(※ARCASIAには1991年に日本も正式メンバーになったそうです。)
これには各国の学生が参加したそうですが、日本からはJIA卒計展で金・銀受賞者を派遣しているそうです。3年生の皆さんにはまだまだチャンスがありますね。
また、建築士の資格に関するお話もしていただきました。
日本における建築家資格は国際建築家連合(UIA)の掲げる資格とは若干異なるようです。
日本における建築士資格は建築専門教育として大学を卒業後、実務経験を2年経ることで試験を受けることが出来ますが、UIAでは認定された大学で5年以上学んだ後、実務訓練を2年以上行い、能力の証明を経て資格が認定されるそうです。
(またJIA登録建築家とは、実務訓練3年+1級建築士+面接を経て登録できるそうです。)
実務経験と実務訓練では大きな違いがあり、今後日本でも実務経験に関しては内容限定への改正が見込まれています。
日本では1級建築士免許取得率が非常に高いそうですが、最近の様々な社会的問題から今後見直されるようです。
後半は少々難しいお話ではありましたが、今後建築を続けてく私達にとってはとても重要なお話でした。
(次回に続く)
安田雅子 (写真右)
1955年4月7日生まれ
1974年4月お茶の水女子大学文教育学部哲学科入学
1978年3月お茶の水女子大学文教育学部哲学科卒業
1978年4月~1979年3月(株)ニッカウヰスキー勤務
1980年5月~1988年12月(社)国際交流サービス協会勤務
1989年1月~(社)日本建築家協会勤務(国際関係、広報担当)
寺本晰子 (写真左)
法政大学工学部建設工学科建築専攻
1968年 法政大学工学部助手
1969年 ㈱建築計画研究所/㈱益田建築設計事務所
1988年 ㈱マアーキテクチャーオフィス
2002年 工学院大学専門学校 2部建築学科
2003年 昭和女子大学生活文化、福祉環境学科、大学院
2004年 東京地方裁判所民事調停員
レポート 渡邉研究室 M1 M・E
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以下、レポートです。
人の役に立つために
04d7031 川田 佳苗
今回は国際的な建築なるために技術や考え方と言うより世界との資格、基準の違いをお話しいただいた。一級建築士やその他の資格は国内しか通用しないと言うのはなんとなくわかっていた。また日本以外の建築家は設計から構造までのほとんどの部分を設計するので地位が高い、と言う話も耳にしたことがあった。今回はそう言った今までなんとなく聞いたことがあった部分を明確にしてくれる、とても興味深い講演会であった。
わたしは今回の講演の中で安田さんが最後におっしゃった「院を出たら一級の受験資格は取れるけど個人的には実務経験を積んでからのほうがよい」と言う言葉が特に印象に残った。わたし自身も以前同じような言葉を言われたことがあるからである。
わたしの場合は将来海外ボランティアをしたくて、しかもなるべく若いうちに参加したいと考えていた。そこである団体の相談員に相談したところその言葉を言われた。「大学を卒業してすぐ行けるものもあるけれど、実務経験を積んでからの方が相手のためになる」と。安田さんの言葉と同じである。建築の資格を取ることもボランティアをすることも、むしろそのふたつに限ったことではないが、信頼を得て人のためになることをする。人の役に立つためには勉強して知識を増やすことよりも実際に経験することが大切だと言うことを改めて感じた。だからいまはあまり勉強しなくていいと言う問題ではないのはわかる。しかし社会に出たら今までのように勉強したら成績が上がる、と言う単純なしくみではないと思う。
また今回の講演会のテーマは「世界に通用する建築家とは」でUIAアコードやJIAの登録建築家についての資格のお話しもしていただいた。その中で日本の建築士は大学4年の後に実務経験2年であるのに対し、UIAアコードは大学5年以上、実務訓練2年以上が必要であった。日本の建築士は世界の建築士に比べ大学年数も少ないだけでなく実務経験も短い。これでは海外の建築家に引けを取ってしまう。
海外ボランティアの建築部門の要請も大卒で行けるものもあるが大半は実務経験が3年ないし5年以上である。わたしは正直いままで少し疑問であった。一級建築士を取ればいいのではないか、と考えている部分があった。しかし今回話を聞いて、国際基準に少しでも合わせるためにそうしているのではないかと思った。
わたしは安田さんの話を聞いて、早くボランティアに参加したいという気持ちを抑えて本当に現地の人の役に立てるレベルまで自分で勉強と経験が必要だと思った。
03d7055 笹川 和晃
テーマ
「世界に通用する建築家になるために建築家をめざす学生のためのキャリア形成ガイダンス」
今回の講演はJIAの安田雅子さんであった。
JIAやUIAの存在ははっきり言って、知らないということのほうが多く、今回の講演はこれからのキャリアで通らなくてはならない大変勉強になるものであった。
講演のほとんどは建築家の人の哲学や思考、建築形態の完成過程などのお話で人として人生として参考になり勉強になるものであったが、また別の意味で今回の講演は勉強になった。
建築の設計監理を行う建築家の団体として、1987年に結成された。日本建築家協会の会員は、建築がクライアントの大切な資産であると同時に、公共にとっても重要な社会的資産であると考えられ、そして建築の設計監理を行う者すなわち建築家は、一定の知識・技術を持つ者として国から与えられる建築士の資格だけでなく、その責任を負うにふさわしい高度の業務遂行能力と倫理意識を持つ必要があると考えられている。
日本建築家協会は、そのような建築家の資質の向上および業務の進歩改善を図ることを通じて、建築物の質の向上と建築文化の創造・発展に貢献することを目的として結成された団体であり、この目的のために建築家職能原則、倫理規定・行動規範および懲戒規定を会員の総意に基づいて定め、自主自律の団体運営を行っているそうである。
欧米では古くから各国で建築家団体を結成し、 自主運営によって建築家がその職業的責任を果たしていく上で必要な活動を行ってきた。日本建築家協会は、諸外国の団体と同じ性格を持つわが国唯一の建築家の団体として、ユネスコの外郭団体である国際建築家連合(UIA)の日本支部となっているとのことである。
その中で建築家とは、建築関係のプロフェッショナルサービスを提供する職業とされている。プロフェッショナルサービスとは高度に専門的で、公共性の高いサービスのことを言い、たとえば医師、弁護士、建築家、会計士等の提供するサービスがそれにあたる。
その中で、姉歯事件について語られていた。あの事件によって建築界の品位や信用は落ち、それを回復するため、社会的信用を回復するためにJIAは機能している。それに関して教育という面から建築家の資格の見直しも進んでいるという。資格試験に関しては試験ではなく訓練ということを多くおっしゃっていた。確かに現在の建築家の中で、訓練され常に能力を向上させることを怠っている人間もいるはずである。それはJIAの指摘するとおり、現在の資格制度に問題があると思われる。
しかし、それは極論を話せば、制限を加えることで強制させるという面も持っていることを忘れてはいけないと思う。反対しているわけではなく、それは「建築家として」という建築家本来の目的意識を失った人たちのためにはうまく機能するが、まじめにといってはおかしいがプロフェッショナルとしての意識を持ち社会的貢献をすると考えている建築家にとっては面倒極まりない話なのではなかろうか。
と反論めいたことを言ったが、「建築家として」という意識を持っているのならば常に自身の向上に努め、社会的貢献をしている(することができる)ということを社会に提示する義務を負うことは何も言わずに認識されていいことである。
ただ、現在の建築家はその前提である、プロとしての意識の希薄さやそれ以前に人としてという意識に欠けてきてしまっているという時代背景があるように感じてならないのだ。
そもそも人として生きるという意識を忘れかけている現代の人々は(自分も含む)こういった「当たり前」という前提条件をモノがあふれる時代に生まれたからこそもっと考えこのことを強く意識して生きていく必要がある。
そういった意味で、制度や資格や訓練といったものは必要性をこれからも増していくであろう。逆にそういった意識が現代によみがえってくるのならば、そういったものは自然消滅的になくなっていきさらに上の次元での能力の開発や進展を促していくことに移行していくはずである。いつの時代もそういったことを繰り返していくことで右肩上がりの形をとりながら3歩進んで2歩さがるということをしている。しかし、この時代にはそのバイオリズムが崩れる可能性があることを忘れてはならない。それは「現代の「人として」という意識の希薄さはいつの時代も一緒だからね」と楽観視できるほどのものではなくなっているのだから。
by a-forum-hosei
| 2006-12-12 01:24
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